2016年 09月 12日
William Eggleston 「For Now」
エグルストンの2010年のベストセラー写真集。およそ3万5000枚もの未発表作品から映画監督のMichael Almereydaが収録作品を選んだ。時間軸は1970年代から2000年代のものまでその幅はとても大きいのだが、その色や作中に流れる空気感は時間の変化を全く感じさせないところがさすがエグルストンといったところ。ただし、登場人物は年をとっていく。おおよそ時系列にまとめられた編集で全体に通底するテーマが家族。表紙で黄色い花柄の布団にくるまれてベッドに横たわる若かりし頃の妻が子供たちの母となっていく。そしてその子供たちは父へと。そのあたりが全体にさりげなく編み込まれているところとタイトルの「for now」という言葉の意味が向き合った瞬間、なんだか優しい気持ちに包まれてしまう。
エグルストンというとやはりアメリカ南部の空気や色が特徴なんだけど、この本はその色をうまく全面に押し出した造本で、とても気に入っている。表紙に使われているくすんだ黄色(深支子っていう色っぽい)の表紙をめくると同系色の見返し(こっちは山吹色っぽいけど)、そこから収録されている写真の随所に黄色のファクターがちりばめられている。美麗な印刷の大判な本なので、ちょっとした小物が黄色であったりするのがよくわかる。もしかしたらそれは別に狙って造ってるわけじゃないのかもしれないが、僕はそんな楽しみ方でこの写真集をみてる。名作。ちなみに収録作品の一枚だけは他の本で発表済みとか。