2011年 12月 26日
尾仲浩二 「海町」
震災後の写真作品としても、とても重要な展示だった。 かつてそこにあったもの、と言われるものは時間の経過によってなくなっていたものがほとんどであって、自然の力で根こそぎ失われてしまった光景、そして作家の視線によってとらえられた瞬間は、唯一無二のものとなった。
尾仲氏の展示を見るときに思うことは、やはり作品の大きさ。 ぎゅっと濃縮されような気配は、作品を見る足を止める。
この「海町」という作品、写真集が出ているのだが、僕はどうもその本が好きではない。 その本の発売が告知された時には、買う気は満々だったのだが、実際に手にしてがっかりしてしまった。 作家の持ち味が出ていない印刷だった。 いや、これはバランスかなあ。 プリントの質を上げると、どうしても本一冊の販売価格が高くなってしまう。 それはこちらも承知だ。 少なからず写真集を買っているので。 だけど、写真集を持ちたい欲を下回るバランスの値段とその質。
展示終了ぎりぎりにすべりこんだのは、実際のプリントと写真集の印刷がどれくらい乖離しているのかを確かめたかったから。 もしかすると、プリントも写真集の色に近いものなのかなあ、という気持ちもあったから。
でも残念ながら、写真集のものより展示は素晴らしかった。 で、思うのですよ。 写真集、もう少し安くてもよかったのでは、と。
(えー、冒頭の文章がおかしいのは承知です)