カテゴリ:写真集( 415 )

Michael Christopher Brown / Libyan Sugar

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published by Twin Palm publishers, 2016,

 昨年のパリフォトブックアワードのファーストブック部門受賞作品、そして今年にはICPのInfinity awardも受賞したマグナム所属作家のMichael Christopher Brownの写真集。昨年といえばアラブの春を捉えた同じくマグナム所属作家のMoises SrmanのDIscordiaという名作も生まれ、今年になってあらためて振り返って見るとドキュメンタリーが強かったのかなあ、という印象。とはいえ、正直にいうとこの写真集を初めて見た時には、あまりにもダイレクトな表現が多すぎてまともに見ることができなかった。死体や血などの直接的なものが普通にシークエンスに織り込まれていて、僕の苦手な部類のど真ん中な本だなと思った。
 作品の舞台はリビア。カダフィ政権に対する反政府デモが起こり内戦状態の渦中に2011年の2月に入国。収録されている写真は一点を除き全てiphoneで撮影されている。この頃って4Sくらいなのだけど、意外と悪くないプリントに仕上がっているのが凄いな、と。全然気にならない。戦争カメラマンってキャノンの巨大なズームレンズがついたカメラをいくつか持ってるイメージが浮かぶけど、ほぼ全てiphoneってのは面白い。身軽でいいのかもしれないが、距離をとった撮影は苦手そう。実際に作中ではお母さんからメールで誰かにズームレンズのカメラを借りて距離をとって撮影しなさいと助言されているし。
 この作品の最大の特徴は、取材でリビアに潜入中での家族とのメールのやり取りを掲載していること。単なる報道という視点ではなく、一人のフォトグラファーの生々しい人間という視点で物語を紡いでいる。そのメールのやり取りからMichaelが置かれている状況の悪化がひしひしと伝わってくる。そして4月。
 解放軍と共に行動していたMichaelらは砲撃され、ジャーナリストも死亡するという出来事が。死傷者の一人にTim Hetheringtonがいて、大きく報道されたのは覚えている。その事件でMichaelも胸に大怪我を負う。
 そこで作品は一転、つかの間の休息のような展開、そしてカダフィの死、再びリビアに。報道の最前線でのiphoneからの視覚は、よりリアリティを生み出し見ている側の我々をその場に引きずり出す強さが生まれ、そこに個人的なストーリーを編集することでより見る側に近しい距離感を携えるという今作品は、紛れもなくフォトジャーナリズムの革命的な一歩ではないのかな、と思ったり。というか、これを本として出版しようと決断したTwim Palmも凄いな、と。
 
 
 
by atsushisaito | 2017-01-27 21:13 | 写真集 | Comments(0)

Lee Friedlander / America By Car

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published by D.A.P. / Fraenkel Gallery, 2010,

 15年かけてアメリカ50州を車で走り撮影された作品。ワシントンDCは走らなかったのかちょっと疑問なのだけど、それはさておきやはりアメリカと車ってなんだけそれだけでポエティックというか、それをリー・フリードランダーみたいな巨匠がやるとやはりフランクのアメリカンズからはたまたサル・パラダイス、そしてディーン・モリアーティへ、と思いが走るわけです。カラカラのボンネットをバンって閉めて、くそ、動かねえ、ドカっと車を蹴り上げるような、なんだかいつでも苛立ちながら汗をかきつつ道に唾を吐いて天をとりあえず仰いで見たり。どうしようもなくダメな青春の1ページ。
 この作品ではフォード、シボレー、三菱そしてトヨタと様々な車種の車が登場するわけだけど、それらはレンタカーだそうで、既に巨匠となってからの作品なので、道で立ち往生してJAF(アメリカは名前違うか)を呼ぶような旅はおそらくしていないのだろう。写真は全て車内から撮影されている。車窓から見える風景をわざと車内から撮影していることがわかるようにフレーミングすることによって、車窓の向こうに見える光景を借景として利用することによって、独特の世界観を構築している。
 様々な土地でいろんな車の中から外に向かって撮影しているのだが、僕はこの作品の主役はAピラーじゃないかあ、と思う。その次にハンドル。サイドミラーはちょっとした脇役で、その背景である土地はBGM的な。つまりあまり重要ではない。Aピラーはフロントウィンドウの両端にある柱。車を運転してると意外と死角になってしまう危険な部分ではあるのだが、あれがないと衝突した時に簡単にペチャンコになってしまうので、なくてはならない代物。
 このAピラーがもちろん車内から撮影しているから随所に写っているわけだが、これがなんとも艶かしくそそり立っていて、存在感があるものとして登場している。モノクロームの美しいプリントで表現されているそのAピラーを見つめていると、リー・フリードランダーが撮影する植物の写真を見ているのと同じ気持ちになってきて、まるでAピラーが何かの意思を持った生き物ではないかと思えてくる。
 このAmerica By Carという写真集、NYのWhitney Museumでの展示の時に制作されたものだけど、その時にデラックスエディションとして、通常版よりふた回りほど大きいA3変形くらいの判型が内容同じでそのままサイズだけ大きくしたのが1000部限定で出ているのだが、一度そっちも開いてAピラーの迫力に圧倒されてみたい。
 写真集はJohn Szarkowskiに捧げられていて、作中にもカメラを持った本人が登場している。大判カメラを手に笑顔のシャーカフスキーはMOMAの写真ディレクターに就任する以前は、財団から奨学金を得て撮影し、個展も行う作家であったそう(初期の作品は写真集にもなってる。就任中は一切自身の作品の制作はしなかったとか。シャーカフスキーの写真の撮影年数を見ると晩年に近い頃のものだが、いい笑顔してる。1967年にMOMAでリー・フリードランダーを取り上げてからずっといい友人だったんだろうなあ。
 
 
by atsushisaito | 2017-01-25 15:32 | 写真集 | Comments(0)

Ed Panar 「Animals That Saw Me vol.2」

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published by Ice Plant , 2016,

 前作のAnimals That Saw Meの続編。装丁(微妙に丸背のあたりが違う?)、ページ数そして掲載写真数も同じくまさしくボリューム2。タイトルのまま、ただ単純に動物が撮影者を見つめているところをスナップした写真をまとめた作品。
 なんだただそれだけかと思われるかもしれないが、ただそれだけでまとめてしまうという発想が普通にはでてこない。そして、そのシンプルなただこちらを見つめている動物の眼差しを見つめれば見つめるほど鑑賞者は撮影者であるPanarと一体同化していくのである。
 この体験に覚えがある人は多いと思う。牛腸茂雄のSelf and othersを観賞しているときがそう。牛腸の撮影された人物を見つめているはずが、対象者の目に写る撮影者である牛腸の気配を感じるときがある。シャッターが落ちた一瞬の止まった時間の中で永遠と交錯する視線の間に鑑賞者が身を置くと、その視線がとても優しく感じたり、すこし不安で緊張していたり、そういった微細なことにまで気がつくのである。
 まあそんなことはさておき、この写真集をただの動物写真集としてしかとらえられないのか、それとも一枚一枚に存在するのその瞬間を愛しく感じられるかは、結局は見る人しだい。ただ、僕には昆虫の視線はよくわからなかったw 鳥も微妙に怪しいのだけど、これはたぶん撮影時の首の動きで判断してるところもあるので、その瞬間はこれからゆっくり吟味してみようと思う。よく見てもわからないかもだけど。
 
 この写真集いいよなあ。意外とこの小さなA5変型のサイズ、好み。vol.1をひさしぶりに開くと奥付にinspiration:Chet (1993-2011)って記載されていることに気がついた。18歳で亡くなったワンちゃんか猫ちゃんの写真を撮っているときにアイデアを思いついたのかな。
 
by atsushisaito | 2016-12-27 12:43 | 写真集 | Comments(0)

Best Photobooks of 2016

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Masahisa Fukase "Afterword" by roshin books
http://roshinbooks.com/afterword.html
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Moises Saman "Discordia" self-published,
http://www.discordiathebook.com/moises-saman/
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Jack Latham "Sugar Paper Theories" by Here press
http://www.herepress.org/publications/sugar-paper-theories/
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Ayano Shimoyama "moonstone" self-published
http://ayanoshimoyama.com/
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Diane Arbus "in the beginning" by Yale University Press
http://www.metmuseum.org/press/exhibitions/2016/diane-arbus
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Emi Fukuyama "I Had Seen the Shore" self-published
http://fukuyamaemi.com/shop.html
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Gerry Johansson "Tokyo" by Only photography
http://www.only-photography.com/pages/publishing_published_1.html#gerryjohanssontokyo
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Araki Nobuyoshi "Sentimental Journey" by Kawade Shobo
https://www.shashasha.co/en/book/sentimental-journey
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Cristina de Middel "Sharkification" by Editora Madalena
http://www.lademiddel.com/thisbookistrue/product/sharkification-by-cristina-de-middel/
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Matt Stuart "All That Life Can Afford" self-published
http://www.mattstuart.com/
by atsushisaito | 2016-12-14 13:00 | 写真集 | Comments(0)

Todd Hido 「Intimate Distance」

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published by Aperture,2016,

 Todd Hidoのこれまでの作品が纏められた一冊。小さいzineなどを除けばほぼNazraliから出版されているのだけど、どれも人気ですぐにsold out。現時点で普通の価格で手に入るものがないので、この機会にこの写真集でHidoの仕事を見ることができるのは、嬉しい。
 ロードムービーのようなあてどなく旅をする感覚、車のウィンドウの向こう側の光景、前景のアウトフォーカスがより寂寥感を盛り立てる。寂れたモーテルでの女性のスナップ、美と醜の絶妙なバランスに独特な色使いが映画的にHidoの世界を演出する。
 
 ちょっと時間がなくて書きなぐり、、
by atsushisaito | 2016-11-17 16:41 | 写真集 | Comments(0)

Mark Cohen 「Mexico」

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published by Éditions Xavier Barral and Univ of Texas,2016,

 Mark Cohenが1981年から2003年の間に8回訪れたメキシコで撮影した写真をまとめたもの。Cohenというとローアングルの変態的な視点で日中シンクロでストロボバン!!っていうイメージだけど、この作品集ではわりと引いた視点が多い。キャプションでは、地元アメリカのウィルクスバリで撮影するように撮影した、とのことだけど、まともな写真が多くて意外。
 彼の作品はわりと最近まで全然知らなくて、2013年にパリのLe Balでやっていた展示とその図録で存在を知った。カメラアングルが際どくて、その対象の抽出の仕方がいかにも痴漢的というか変質者っぽくて、そしてそれをさらに演出する乱暴なストロボな使い方が面白い作家なのだけど、日本での露出があまりない、というより作品集もそんなに出てないみたい。
 70年代にはジョン・シャーカフスキーのキュレーションでMOMAで展示していたりする作家で、もうちょっと色々知りたいところ。写真集のカバーがかっこよくて、布クロスにプリントしているのだけど、使っている色が大胆にも黄色。元の布の色と相まってなんとなく蛍光色っぽく見えて素敵。丸背も合ってる。
 
by atsushisaito | 2016-11-14 12:09 | 写真集 | Comments(0)

Alexander Gronsky 「Mountains and Waters」

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published by The Velvet Cell, 2016, edition of 750,

 先日のTABFで購入した1冊。グロンスキーの新作。日本でも展示があったりレジデンスで作品を製作したりと、日本でも広くその名前が広がりつつある。今回の舞台は中国。上海、重慶そして深センの郊外を中心に撮影したもの。世界の構造を捉えるセンスがずば抜けている感覚を持っている作家なので、その写真の中には拡大していく社会とその影が混在し、またスモッグだろうか、視界をぼんやりとさせてしまう空気が作品を神格化させている。
 ただ、もう少し装丁には力をいれて欲しいし、紙も少し厚手にしてほしかった(折れそうで嫌)。とはいえ、現在の彼の人気を考えると売り切れ必至なので、今のうちに是非。今のポンド安だったら、はやくポチったほうがいい。
http://www.thevelvetcell.com/products/mountains-and-waters-alexander-gronsky

by atsushisaito | 2016-09-24 17:44 | 写真集 | Comments(0)

Cristina De Middel 「Sharkification」

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published by Editora Madalen, 2016,edition of 1500,

 Afronautsでのデビュー以降の活動がものすごく盛んで、出版物もとても多いCristina De Middel。どの作品も感覚のみで撮るような作品ではなく、入念なリサーチを積み上げてからの撮影なので、次から次へとよく製作できるなあと唖然とする。実際、いくつかの彼女の写真集を持ってはいるが、こちらが読み解く時間がなくて、ちゃんと見れていないものもある。
 このSharkificationはTABFで購入したのだが、明確なコンセプトで分かり易い作品だったので彼女の他の作品より先に掲載。代官山蔦谷に解説文があったので、こちらを読んでもらったほうがわかりやすいと思うので、勝手に掲載(ごめんなさい)。

 プリントつきのスペシャルエディションが100部あるみたいだけど、そっちも触りたい。

代官山蔦谷のサイトから http://store.shopping.yahoo.co.jp/d-tsutayabooks/art55639w.html
「ブラジル・リオデジャネイロには、ファべーラと呼ばれる治安の悪いスラムに数百万人が住んでいます。2014年のワールドカップと16年のオリンピックを前に、無計画に建てられ迷路のようになった木造の小屋が立ち並び犯罪の温床となっているその地域を一掃すべく、ブラジル政府は武装した警察を送り込み麻薬組織や犯罪集団の掃討作戦を開始しました。告発やでっち上げが横行し、突然誰が容疑者にされてもおかしくない状況を、写真家クリスティーナ・デ・ミデルはサメという捕食者がいる珊瑚礁に見立て、海底世界のように撮影しました。フロントガラスの割れた車や覆面の男といった攻撃的なイメージは水色の深海のようなレイヤーに覆われフィクション的に表現されています。表紙外ページの地図の水色部分はスラム地域を表しており、ファベーラでの抗争にまつわる記事もプリントされた凝ったブックデザイン。人々の感情に直接訴えかける従来のジャーナリズムに拠らず、知的に編みなおされた物語として提示しています。」
by atsushisaito | 2016-09-22 17:50 | 写真集 | Comments(0)

Yulia Krivich 「PRESENTIMENT」

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published by Fundacja Sztuk Wizualnych, 2015, edition of 300,

 端正なクロスのハードカバー、いわゆる表1といわれる表にはなんの表記もない。背にはポーランド語、英語、ウクライナ語にロシア語と4言語が並び、一目ではなにが書かれているのかわからない。英語の「PRESENTIMENT」だけわかった。本を開くと、そこには完全に綴じられていないニュースペーパープリント。本を縦にしてページを捲っていく。折ってあるものを開くものだから、綺麗に作品を見ることができない。また綴じられていない部分に隙間ができる。ちょっと雑な作りだなあ、と軽く触ってしばらく放置していた。デザインがお気に入りのAnia Naleckaで、編集もAniaと写真家のRafal Milach(彼もお気に入りの写真家)で期待していた分、落差が激しかったわけだ。
 といってもせっかく手元にあるのでちゃんと読み込んでみようと、最近触ってみるとなんとなく造りに対してしっくりときた。作家のYulia Krivichはウクライナ出身で、ポーランドで写真を学び現在もそこで作家活動を続けている。そしてたまに帰省するのだが、運がいいのか(写真家として)悪いのかウクライナは東西を分ける紛争に突入していく。撮られている写真がフィクションなのかノンフィクションなのか、それはわからない。しかし彼女はその激動に揉まれていく空気を表現している。それを踏まえた上で造本を見直してみると、ニュースペーパープリントのもろさ、折り目、そして結合しきれないつなぎ目、どれもがウクライナの不安定さをそこに投影しているのではないか、そして編集の平和的な写真と暴力が織り成される様も揺れる作家の心情を紡ぎだしているのではないか、そういう風に見ると、なんとなく理解できたかな、と思った。
 奥付に作家のテキストが掲載されているが、そちらもポーランド語、英語、ウクライナ語、ロシア語の4つ。このことがもしかしたら一番この作品を象徴しているのかもしれない。最後の裏表紙に空押しで小さく作家の名前が押されていて、それを指先でそっと触れた瞬間、いい作品だなと感じた。
http://www.flotsambooks.com/SHOP/PH02757.html


by atsushisaito | 2016-09-14 13:09 | 写真集 | Comments(0)

William Eggleston 「For Now」

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published by Twin Palms Publishers, 2010 , 1st edition of 3000,

 エグルストンの2010年のベストセラー写真集。およそ3万5000枚もの未発表作品から映画監督のMichael Almereydaが収録作品を選んだ。時間軸は1970年代から2000年代のものまでその幅はとても大きいのだが、その色や作中に流れる空気感は時間の変化を全く感じさせないところがさすがエグルストンといったところ。ただし、登場人物は年をとっていく。おおよそ時系列にまとめられた編集で全体に通底するテーマが家族。表紙で黄色い花柄の布団にくるまれてベッドに横たわる若かりし頃の妻が子供たちの母となっていく。そしてその子供たちは父へと。そのあたりが全体にさりげなく編み込まれているところとタイトルの「for now」という言葉の意味が向き合った瞬間、なんだか優しい気持ちに包まれてしまう。
 エグルストンというとやはりアメリカ南部の空気や色が特徴なんだけど、この本はその色をうまく全面に押し出した造本で、とても気に入っている。表紙に使われているくすんだ黄色(深支子っていう色っぽい)の表紙をめくると同系色の見返し(こっちは山吹色っぽいけど)、そこから収録されている写真の随所に黄色のファクターがちりばめられている。美麗な印刷の大判な本なので、ちょっとした小物が黄色であったりするのがよくわかる。もしかしたらそれは別に狙って造ってるわけじゃないのかもしれないが、僕はそんな楽しみ方でこの写真集をみてる。名作。ちなみに収録作品の一枚だけは他の本で発表済みとか。

by atsushisaito | 2016-09-12 14:08 | 写真集 | Comments(0)