Best photobooks of 2013

 今年を振り返ってみると、昨年と比べると随分と選び方が変わったように思う。 やはりそれは4月あたりからのroshin booksの立ち上げ、そして出版に漕ぎ着けてからの細々としたこと。そういうものがダイレクトに選び方に直結していて、いままで写真集の中身に比重が大きかったのが造本の仕方に目が大きく移ってしまった、そして単純に張り込み日記が発売されてからの梱包などの実務のために、写真集を見て楽しむという行為の時間が大幅に削られてしまい、まだより時間があった出版前に目にした作品が大きく印象に残ってしまったのも選択に影響が出ている。3ヶ月も経たない間に900冊近くを一人で梱包出荷していたので、それはまあ仕方がないとは思うけれど。
 それでもいろいろ考えて、とりあえず10冊選んでみた。もちろんこの他にも素晴らしい写真集はたくさんあったのだけれど、小さい出版社を多少贔屓目に選んでいる。そして、20冊くらいざくっと選んでみた山を見て思ったのだが、僕はとにかくハードカバー、それも布貼りが好きなのだなあ、と。堅い本が好き。 手に取ってその質感がより率直に感じられるクロス装丁の本が、なによりもしっくりとくる。ただクロスなのではなくて、硬いの。手のひらで触って感じたその具合も、考慮の要素に入っている。 
 ただ、先にも書いた通り、9月以降の写真集はなんとか買ってはいるものの、しっかり見れていないので、参考からかなり漏れている。パリフォトから帰って以降、急速に未読の山が増えてしまって困っている。 あ、復刻本などは迷ったけど、外した。だって既に評価を得ている作品だし。でもGarry WinograndのSFMOMAの図録は最後まで迷ったなあ。 
 あとは自分で所有している写真集が、選考条件です。そんな感じです。

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志賀理江子 Rieko Shiga「螺旋海岸」 published by AKAAKA
http://atsushis.exblog.jp/19648669/

 これはもう本当に誰もが選ぶだろうから、外したい気持ちがとても大きかったのだけれど、外せなかった一冊。 写真集が出る前に仙台メディアテークでの圧巻の展示を体験してしまったから、もうその魔術に引き寄せられたかのように、Vacantでの出版記念サイン会に並んでしまった。展示の再現とはまた別の意味で面白く、裁ち落としでページを捲る度に迫り来る写真が凄かった。 

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原芳市 Yoshiichi Hara 「常世の虫」 published by Sokyusha
http://atsushis.exblog.jp/19764412/

 これも惚れた一冊。原芳市氏のそれまでの写真集って、その編集というか作品を作る方向性にいまいち共感できなくて、例えばそれは風景にヌード写真が構成されてるような、でもそれは氏の作品作りの過程を知っていくと、その必然さは理解できるのだけど、写真集単品で見ると僕にはその幅がブレのような、より作品の着地点を曖昧にしていくようなものに感じていた。 しかし、これはより虫というモチーフに焦点が当たることにより、氏の鋭さと繊細さが同居した感性が明確に立ち現れる結果となったと感じられる。
 そして、なによりそれを生かしたのがデザイナーの加藤氏の功績で、例えば表紙の箔押しから見返しの使い方、どれも作品の良さを増幅させて昇華するという素晴らしい仕事だと思う。 
 roshin books 第二弾はこの本のデザイナーの加藤氏にお願いし、ちゃくちゃくと進行中。

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Carolyn Drake 「Two Rivers」 self-published
http://atsushis.exblog.jp/20753297/

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Tim Smyth 「Defective Carrots」 published by Bemojake

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Emile Hyperion Dubuisson 「FAR」 published by ADAD books
http://atsushis.exblog.jp/20678673/

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Edmund Clark 「Control Order House」published by Here Press
http://atsushis.exblog.jp/20402799/

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Lukasz Wierzbowski 「Sequin Covered Swans」published by Éditions du LIC
http://atsushis.exblog.jp/20016998/

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Mark Power 「MASS」 published by GOST books
http://atsushis.exblog.jp/19736726/

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Mike Brodie 「A Period of Juvenile Prosperity」published by TWIN PALMS PUBLISHERS
http://atsushis.exblog.jp/20173962/

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渡部雄吉 Yukichi Watabe 「張り込み日記 Stakeout Diary」published by roshin books
http://atsushis.exblog.jp/20813335/

 手前味噌で本当に申し訳ないのだけど、しかしあながち間違ったセレクトではないと思うこのA criminal investigationの日本版。 装丁、編集からして全くフランス版とは別物の作品で、また違った良さがある。 日本の写真界隈の中で2011年に発売されたフランス版のことを知っている人はそれなりにいたと思う。でもそんなの本当に一部であって、日本で千人くらいしか知らなかったのではないかと思う。そんな馬鹿な、と言う人がいるかもしれないが、そんな馬鹿なことがあるのです。 当初、この本を出すに当たって、そんなにヒットした本をいまさら日本で出す理由があるの?という人がいたのは確か。 そして実際にフランスでは、もうこの本は持っているから日本版はいらない、という意見があったのも確か。
 どのくらいヒットしたのか。販売総数とはまた別なのだけれど3刷で7000部。 世界に流通しているのが7000部。こんな極東のマニアックな古い写真が7000部って異例中の異例だけれど、実はこれって初版は日本にはほとんど入っていない。 2012年の春に、著作権者の息子さんが持っていた100冊の一部が流れたものの正式に日本の書店と取引して発売されたのがないという。初版2000部中の100冊。TAP Galleryで少量販売したけれど、かなり貴重だったのです。
 振り返ってみて、今現在の日本での反響の大きさを考えると、出してよかったなあ、いう実感です。普段、写真というジャンルに目を向けていない層からコアな写真集コレクターまで、幅広く受け入れられたことは、本当に嬉しいです。
 予算のない中、デザイナーの古田さん、編集の網野さんには感謝してもしきれないです。 結果出来上がった本は、一人の写真集好きとしてみても素晴らしい出来上がりで、自信を持って販売することができました。 発売3ヶ月での異例ともいえるSold outははとにかく感無量です(まだ数冊残ってますが)。
 とにかくいい本なので、書店で見かけたら買ったほうがいいと思います。 
 
by atsushisaito | 2013-11-28 13:01 | 写真集 | Comments(0)
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