Jason Eskenazi 「By the Glow of the Jukebox: THE AMERICANS LIST」

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 写真家でもある著者が20カ月の間、NYのメトロポリタンで警備員をしていた時に、Robert FrankのLooking'in展という名作The Americansを詳細に分析する巡回展が行われた。その期間に、警備員という立場を生かして来場した写真家達へThe Americansの中から一枚選ぶなら?という質問をした。 選んだ一枚のタイトルとその理由、276人分が綴られた小冊子(理由を書いてない作家もいる)。 
  

例えば写真集の最後のU.S.90 en route to Del Rio, Texasと名付けされた一枚を選んだ人のコメント。
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 僕にはこの写真は忘れられなくて、とても好きな一枚だ。旅の途中で道の脇に車を停めで休んでいる写真。でもそこには愛があるんだよね。これは本当に素晴らしい家族愛の写真だ。僕に希望を感じさせてくれる。愛は可能性に満ちていて、そしてこの危険な世界においての唯一の束の間の休息でもあるんだ。 S.S

 昔からずっと私に大きな影響を与えてきたロバート・フランクの作品の中でも、The Americansには、深く感銘を受けた写真が多い。その写真の中でも常に僕の心の眼を突き刺すのは、U.S.90 en route to Del Rio, Texas、The Americansの177ページ、夕暮れ時、フランクの妻のメアリーと息子のパブロが車にいる写真だ。路上の雰囲気と、共に旅をする家族へのフランクの愛を感じられる。 
 (著者へ)君のプロジェクトの凄いことは、僕を書斎に行かせてThe Americansを開かせたことだよ。ありがとう。 T.W

 ロンドンに日曜の夜に帰ってきました。そしてこの質問について2日間ほど考えていました。もう少し必要かも。とにかくとりあえず答えますね。とても簡単な理由になってしまうと思いますけど。、、、とにかくこの写真は私にとって、とても共感できるの。それはこの写真が写真集の中で一番私的な写真だからかな、、、。 この一枚には本当に私の琴線に触れるものがあるの。それは人の表情だったり、車の後ろに広がる空虚な風景だったり。彼らの旅を想像してみるの。本の最後を飾る一枚としては、この写真はとても重要だと思う。 
 でもフランクの写真はどの仕事も私的な要素が強いわけだけど、、、こんな感じです。 V.M

 U.S.90 en route to Del Rio, Texas、この写真からはその親密さや愛情、そしてロマンチックな空気を感じることができるので好きだ。フランクが路上で撮影していた数年間、彼は家族と過ごす時間はとても少なかったと思う。しかしこの状況では明らかに家族と共に旅をしているのだ。 どうしてこんな一枚が残っているのだろう? 家族を連れて旅するをことは決して簡単なことではない。それは障害でしかない。そして車の背後に長く続く道、まだ旅の途中だ。 なぜこの写真が本の最後に? そしてなぜこの瞬間の写真を撮ったのだろう?フランクがトイレ休憩で車の外に出た時?、もしくはタバコ休憩?妻や子供は寝ていたの?
 この一枚は僕にとってすべてだといっていい。 旅、車、家族とのひととき、そして写真、すべてが混然となったそれはロマンティックなのだけど、でもはっきりとは掴みきれない。 すこしミステリアスな一枚。J.S.H

 僕はヘッドライトがついた車の中に家族がいる写真を選ぶ。これはフランクの家族への愛の写真でありつつ、その愛する家族を置いて旅をするという自身に存在する矛盾を表現した一枚でもある。家族と共に暮らすことも必要なことだが、路上に立ち旅をするのも彼の仕事だ。この写真を見て僕はそう理解した。 そして、この写真はシンプルでとても上品な作品だ。The Americansの中でもっとも美しい写真のひとつだよ。 C.A

 どうしようかな、一枚を選ぶって難しいね。The Americansにはたくさん好きな写真があるけど、決めるなら本の最後の写真。フランクの奥さんと子供が車の中にいる写真。とても詩的なイメージだ。詩的なんだけど、写真が語る物語はとても強いし。ビートニクの写真家の路上の旅人としての自叙伝を象徴するような一枚だ。 Y.S




 これはほんの一部で、中には長文もあり。写真なしの文章だけの冊子なので、写真集と合わせてみると面白いし、一冊の写真集に対してのそれぞれの視点が見えて興味深い。 また、こんなことをやってみようと思い立ちそれを実行し、自費で出版してしまう著者の行動も面白い。 そしてRobert FrankのThe Americansがいかに金字塔として打ち建てられ、後世に影響を与えているかが理解できる。
 ふと思ったのだけど、日本はあまり個々の写真にタイトルをつける習慣が薄いかも。あってもナンバーリングに近いものだったり。
 日本語訳は超超訳なので、そういう感じでリストされてるんだ、という雰囲気だけ感じてもらえれば、、、。
by atsushisaito | 2013-05-12 15:25 | 写真集 | Comments(0)
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